蕎麦といで湯の信州ツアー #3

今日は斑尾高原に登って蕎麦を食って長野を目指すルート。飯を食って身支度して 8 時過ぎ出発。飯山の町外れにある野菜直売所に立ち寄ったらちょうど店が開いたところだった。美味そうな野菜がたくさんあったがあんまり重いものを買うわけにも行かないのでアスパラとハタケシメジを買った。
飯山から斑尾に行くには県道をずっと登っていけばよいのだが、普通に県道を登ってもつまらないので地図を見て一つ西側の沢筋を登る道を取ることにした。ところがこの道がダートというか昔簡易舗装だったところが荒れ果てたままになっているという感じ。路面は締まっているので極端に走りにくいわけではないが、小石が散らばっているので注意が必要だ。あんまり天気は上々、沢の流れの音も耳に心地よい。時おり鶯が鳴いている。
しばらく走っていくと道の向こうが灰色になっている。やれやれ舗装路になったか、と思っていたが近づいていくと全く違った。灰色の細かい砕石が分厚く敷いてあって、タイヤが取られてハンドルをうまく操れない。仕方ないので押して歩く。幸い数百メートルほどの区間だけだったので助かった。自転車にとっては全くありがたくない。
沢筋の分かれ道を右にたどり沢から県道への道を登っていく。道路は舗装になったが 10% を超えるような坂の連続でなかなか厳しい。もっとも九十九折をいくつかこなせば 100m くらい簡単に高度を稼げてしまうから気が楽といえば楽だ。
県道近くなると斑尾高原のホテル群が見えてきた。あと 200m くらい登る必要がありそうだが地図で見てもそんなに距離はない。…ということはけっこう坂がきついということだ。じわじわと坂を登っていくと後ろからロードに乗ってきたお仲間に追い抜かれた。そこに車がドリフトしながら登ってきたので「アホがいますねー」とローディの方にご挨拶。
10 時半過ぎ斑尾高原に到着。さっきのローディの方がいたので少し話をする。ぼくらが昨日通った国道経由で新潟から来て、野尻湖のほうに抜けて帰るらしい。
ぼくらは斑尾高原から涌井という集落の蕎麦屋を目指すことになる。本当はこの集落に直接出られる道があるようなのだが曲がるところがわからず道を直進。気持ちいいダウンヒルだ。川沿いに下って県道に出て少し坂を上ったところが涌井の集落だが、さて目指す店が見つからない。二軒蕎麦屋があるのだが、Y によるとそのどちらでもないらしい。集落の上まで道を登って振り返ると道に分岐があり、どうやらその奥らしい。ぼく一人先にその分岐まで戻って確かめてみると、果たしてそこが目指す蕎麦屋涌井せんたあだった。Y に降りてくるよう促し店に入る。しかしこの店、道に看板も見当たらないし初めての人は絶対わからないよ。時間によっては相当混むらしいが昼前だったので席は空いていた。
メニューは簡単。ざる蕎麦と天ぷらのみ。種ものもあるらしいが見ているとほとんどの人はざる蕎麦だ。もちろんぼくらもざる蕎麦(大)と天ぷらを注文。しばらくするとプラスチックの大きな笊に盛られた蕎麦がやってきた。以前川中島で食った蕎麦のように雪崩れるほどのボリュームではないが二人前ともなると相当な量だ。さっくり揚がった山菜の天ぷらとともに食べるともう極楽としか言いようがない。太めだがするりと喉を通っていく。まあぼくらは自転車で走ってきたから完食できたようなもんで、普通の人は大盛りを頼むと大変なことになる。後ろにいたカップルなど大盛り二人前をもてあまして半分涙目になっていた。
食べ終わってトイレに立ち手を洗ったら水がものすごく冷たい。やっぱりこの水あってこその蕎麦なんだ、と納得した。蕎麦粉がどうだとか出汁がどうだとか小うるさい人たちが何を言おうと、蕎麦の味は結局水で決まってしまうんだねぇ、というのが長野で三日間蕎麦を食べ続けて得られた結論。
さて出発。しばらく西に走ってから県道 60 号を南下して長野を目指す。牟礼までは下り基調の気持ちいい道。ところどころヤマザクラやヤエザクラが咲いている。牟礼からはやや登りになり、日が差してきて暑い。どこかで休憩しようと思ったら農産物直売所とコンビニがあったので止まる。三本松という地名だが、一茶が江戸に出るときに親と別れたところらしい。直売所でセリだのアスパラだの野沢菜だの購入し、コンビニでコーラを買って飲む。やっぱり暑いときにはコーラに限る。プロだって補給に飲んでるくらいだしね。
県道は風情がないので旧道をたどっていくと「←丹霞郷」という目立たない看板を発見。なんだろうと進んでいくと、濃いピンク色の桃の花が咲き乱れている。そしてその先には雪を頂いた北信五岳。去年甲府盆地で見た桃の花もよかったけれど、ここも負けず劣らず素晴らしい見晴らし。丹(あか)い霞とはよく名づけたもんだと感心する。つい風景に見入ってしまった。
再び旧道に戻ると向こうに善光寺平の風景が広がってきた。エムウェーブらしき建物なんかも見える。近代的な建物が立ち並ぶ現在とはもちろん違っているけれど、それこそ一茶が目にした善光寺平の風景もこんなたたずまいだったに違いない。その昔、この北国街道を通った多くの人も善光寺平を見て同様に何事かを感じただろうと思ったらなぜだか涙が湧いてきた。
いよいよ長野市に入る。帰る前に風呂に入ろうということで温泉をピックアップしてあったのだが道がわかりにくく迷いかけた。何とかたどり着いたが住宅地の奥にあるので冬はアクセスが大変そうだ。若槻温泉というこの温泉はややぬるめだが褐色の掛け流しの湯で、露天風呂もあってなかなか気持ちがよい。人もほとんどいないので露天風呂を独り占めできた。
汗を流したところで長野駅へ。輪行袋に自転車を詰め、ビールと弁当を買って電車に乗る。姨捨の風景を堪能しつつ飲むビールはなかなか格別だった。甲府と高尾で乗りかえて帰宅。北信を堪能した三日間だった。