世界選手権男子エリートロード

だれが勝つかということよりむしろ、今日での引退を表明した Bettini がどういう動きを見せるか、個人的に今日の見所はこの一点だけだった。
序盤から中盤、イタリアは終始メイン集団の先頭を引いて主導権を握り、スペインはイタリアのマーク。時折見せるイタリアのアタックにスペインは淡々と対応。今回のコースはあまり高低差がなく、登りでのタイム差がつきにくい。
中盤にかけては Bettini も自ら再三のアタックをかけたが他国がチェックに入ってしまい、なかなか逃げが決まらない。これはスプリント勝負になるかと思われたが、残り周回が少なくなって Rebellin や Cunego が積極的に前を伺い、これに反応した 10 名ほどで先頭集団が形成された。Bettini は残りの坂が少なくなって再び先頭を窺うかに思われたが動かず、気がつけば先頭とメイン集団の差は広がるばかり。残り一周、Bettiniプロトンの仲間に最後のお別れとばかりに握手をして回り、自らの勝負はあきらめた様子。メイン集団に残ったのは各国エース級の選手ばかりでアシストが不足しており、すでに前を追うエネルギーは残っていない。勝負は先頭集団の争いに絞られた。
そんな中、一度は先頭集団から切れかけた Ballan が残り 3km で切れ味良いアタック。これを誰も追うことができない。ロングスパートがぴたりと決まって Ballan が地元開催で歓喜のゴール。
イタリアは他国の集中を Bettini に引き付けつつ最後の段階で Rebellin、Cunego、Ballan の 3 人を先頭に送り込んでおいた戦術がぴたりとはまった。一方ずっとイタリアをマークし続けていたスペインは最終盤で完全に後手に回り、勝つチャンスを作れなかった。今年はスペイン勢がグランツールと五輪を独占しただけに、画竜点睛を欠く結果になった。
今日で引退の Bettini は落ち着いた表情でメイン集団の先頭に立ち、ガッツポーズと投げキスで Ballan の優勝と自らの引退を祝福しながらゆっくりとゴール。まさに王者の凱旋にふさわしい堂々たる姿。優勝での引退こそならなかったが、他国のエースを自らに引き付けることでイタリアチームとしての世界選手権 3 連覇をお膳立てした。素晴らしい引退劇だったといえよう。